未病

未病とは?考え方と注目の背景、未病予防の事例をわかりやすく紹介

未病

未病(みびょう)とは、健康と病気の間にある状態とされ、病気とまではいえないものの、健康を保てず、病気になりつつある過程の総称とされています。日本医師会の説明によれば、五臓六腑は繋がっており、軽いうちに異常を見つけて病気を予防するという考え方とされています。(参考:日本医師会

未病

参考:HQC TOKYO

未病は、病気になってしまう前に事前対策をするのが本質ですが、そのためにはまず、『自分自身の健康状態を正しく知ること』から始まります。

最近は遺伝子検査やトレーニングジムの流行りもあり、健康への意識改革は進んでいるとはいえ、自分は『本当に健康なのか?』と疑問を持って生活している方は少ないかと思います。

そこで今回は、未病が注目されてきた背景などを交えながら、未病予防に取り組むために大事なことをご紹介します。

未病とは|医療システム崩壊の歯止めに向けた取り組み

未病予防の背景|日本人口における高齢化の加速

未病に注目が集まっている背景として、高齢社会の加速があります。2019年現在、内閣府の『平成30年版高齢社会白書』によれば、日本人口の高齢化率は27.7%。全人口1億2,671万人のうち、65歳以上が3,515万人という超高齢社会となっています。

下図は日本の平均寿命の推移を表した図ですが、2015年に男性80.75年、女性86.98年であった平均寿命は、2040年に男性83.27年、女性89.63年となり、2065年には男性84.95年、女性91.35年となると予想されています。

平均寿命の推移参考:国立社会保障・人口問題研究所|日本の将来推計人口(平成29年推計)報告書

『未病予防』の本質は健康寿命を伸ばすこと

また、平均寿命の数値に関しても高齢社会では重要な指標ではありますが、社会的に平均寿命以上に重要なのは『健康寿命』という考え方です。

健康寿命参考:厚生労働省|健康寿命の定義と平均寿命との差

健康寿命とは、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」と定義されているものです。先ほどの平均寿命の伸びに対して、健康でいられる年齢との乖離が男性で約9年、女性では約13年もの差が出ているように、この差が拡大すれば、健康上の問題だけではなく、医療費や介護費の増加による家計へのさらなる影響も出ると懸念されます。

今後、平均寿命の延伸に伴い、こうした健康寿命との差が拡大すれば、医療費や介護給付費の多くを消費する期間が増大することになります。疾病予防と健康増進、介護予防などによって、平均寿命と健康寿命の差を短縮することができれば、個人の生活の質の低下を防ぐとともに、社会保障負担の軽減も期待できます。

引用元:平均寿命と健康寿命をみる 2 – 厚生労働省

医療・介護システムの崩壊を危惧

このまま日本で少子高齢社会が続いた場合、医療・介護システムの崩壊を招く可能性があると危惧されていることも、未病が着目されている理由です。

国立社会保障・人口問題研究所の『社会保障給付費の部門別推移(1950~2017年度)』をみると、1970年頃から1980年までのわずか10年間で社会保障給付金額は約5倍に激増

年度 社 会 保 障 給 付 費(億円)
合計 医療 年金 福祉その他 介護対策
1950 1,261 646 615
1955 3,893 1,919 1,974
1960 6,553 2,942 3,611
1965 16,037 9,137 3,508 3,392
1970 35,239 20,758 8,562 5,920
1971 40,296 22,575 9,732 7,990
1972 49,889 28,195 11,703 9,990
1973 62,640 34,390 16,218 12,033
1974 90,437 47,375 26,139 16,923
1975 118,192 57,321 38,047 22,825
1976 145,796 68,320 52,548 24,928
1977 169,883 76,497 64,903 28,483
1978 198,965 89,420 77,336 32,209
1979 221,040 98,007 88,710 34,323
1980 249,016 107,598 103,330 38,089
1985 356,798 143,595 167,193 46,009
1990 474,153 186,254 237,772 50,128
1995 649,842 246,608 330,614 72,619
2000 783,985 266,049 405,367 112,570 32,806
2005 888,529 287,444 461,194 139,891 58,701
2010 1,053,646 336,439 522,286 194,921 75,082
2015 1,168,403 385,605 540,929 241,869 95,060
2016 1,184,089 388,128 543,800 252,162 97,063
2017 1,202,443 394,195 548,349 259,898 101,016

参考:社会保障費用統計(平成29年度)|国立社会保障・人口問題研究所

今後さらに増える事が確実な高齢者がみんな病院に行くようになれば、医療や介護をはじめとする社会システムの崩壊は火を見るよりも明らかです。

国民皆保険制度自体は世界的に見ても素晴らしい制度です。それを維持する一番簡単な方法が、『病院に行かずに済む』。病気になる前に予防をして、『健康寿命を伸ばすこと』こそ、真に健康な生活を送ることに繋がる、と言うわけです。

国や企業も未病予防に取り組み始めている

現代の医療業界において、『病気になってしまう前に未然に防ぐ』という考え方はかなり重要視されており、日本未病システム学会では『未病専門指導師』の導入、未病専門のクリニックの開院、都道府県(神奈川県)が『未病予防』に取り組んでいるなど、その注目度は高まっていると言えます。

2.「未病」とは?~未病を治すかながわ宣言~

人の健康状態は、ここまでは「健康」、ここからは「病気」というように明確に分けることはできません。健康と病気の間で連続的に変化している状態を「未病」といいます。

その未病も、機能性食品などの摂取により健康な状態に戻すことが出来る第一段階と、血圧を下げる薬などが必要な第二段階に分けられます。

未病は人によって様々な症状や程度を示すことから、未病の診断・治療には、あらゆる角度からの検討や対応が必要です。
引用元:神奈川県

未病予防事業への参入も激化|市場は33兆円

また、企業もこの『未病・予防産業』への参入も多く、製薬会社、IT企業、認知症研究を行う機関がAIを活用したヘルスケアアプリを開発するなど、健康意識への高い関心を示していると言っていいでしょう。

人生100年時代の到来が叫ばれる中、医療や介護にかからず自立した生活ができる「健康寿命」の延伸は社会的な課題だ。厚生労働省の16年の調査によると、平均寿命と健康寿命の間には男性で8・84年、女性で12・34年の差がある。国も健康寿命の延伸を重要政策に掲げており、製薬企業もビジネスチャンスと捉えている。

経済産業省の推計によると、公的保険外のヘルスケア産業の市場規模は25年に約33兆円(16年比8兆円増)まで拡大するとされる。事業領域の拡大に向け、未病や予防の分野に参入する製薬企業は増えるだろう。
引用元:スマホAIで病気を治す医療&ビジネス:未病・予防ビジネス 「33兆円市場」に続々参入 認知症やメタボで事業創出=前田雄樹 | 週刊エコノミスト Online

 

未病予防の対象となる病気は?

  1. 何となく体がだるい
  2. 最近疲れやすくまた疲れが取れない
  3. 体が冷える、頭痛や肩こり・めまいがする

など。体の不調を感じる自覚症状はありませんか?

もし、上記のような体の不調を示す症状を自覚しているのに「健康診断の結果上は何も悪くない」という場合、軽く考えていると後から重大な症状に発展する可能性もあります。病院の検査で異常が認められなかったとしても、未病の種類や症状は人によって個人差があります

つまり、未病の診断・治療には、あらゆる角度からの検討や対応が必要であり、それを判断するのは加齢に伴うものなど、複数の原因が関係するとされ、正確に判断するには医師との協力が大事なポイントです。

表:健康~未病~病気の移りかわり

臓器/機能 健康 未病 病気
血管 しなやか 脈硬化
高血圧
脳出血
大動脈癌 など
糖代謝 基準血糖値 血糖値上昇
インスリン抵抗性
糖尿病
糖尿病合併症
糖質代謝 奇病ん糖質値 高糖血症
動脈硬化
心筋梗塞
脳梗塞

参考:神奈川県衛生研究所|未病を知ろう!~病気になってしまう前に〜

未病が『これから発症するであろう病気』のことをさす以上、高脂血症、糖尿病、高血圧以外にも、生活習慣病であれば未病予防の一部と考えられる項目になるのではないかと思います。

生活習慣病の患者数は全国で約1800万人いる。予防医療に積極的な広島県呉市はレセプトデータを基に糖尿病患者に保健指導したところ、新たに人工透析した患者数が6割減った。内閣府の試算では喫煙や血糖値などリスク項目が多く当てはまる社員の1割がリスク要因を改善すると年3200億円削減できる。

引用元:日本経済新聞

 

未病のチェックリスト

どんな症状があれば未病の状態と言えるのか、正確に判断するのは難しいですが、『田辺三菱製薬ヘルスケア』が未病のチェックリストを公開していますので、ご紹介します。2つ以上に心当りがあれば、未病ではないか?と注意できる一つの判断基準になると思っていいでしょう。

未病のチェックリスト

□ 朝から疲れやすく、出勤途中なのによく眠る
□ 年中、かぜ気味である
□ 食が細く、食後、膨満感がある
□ 寝つきが悪い、眠りが浅い
□ 夜、手足がほてる
□ 顔色がドス黒く、つやがない
□ 現在、病気はないが、生まれつき腺病質である
□ 偏食である

参考:未病|田辺三菱製薬ヘルスケア

未病予防を始めるタイミング|自覚症状がなくても早めに始めるのが良い

病院の検診でも最近はさまざまな検査が可能になり、自覚症状がないにも関わらず検査値異常を指摘されるケースがあります。未病は生活の質(QOL:quality of life)が侵される前に、病気を治療をしていく「治未病」(ちみびょう)の考え方が、今後、より重要になってきます。

少しでも調子がよくないと感じたら、未病の始まりと言われていますが、未病には、自覚症状がない場合も多いです。健康診断などの検査結果で異常がわかってはじめて、体の不調に気付くこともあるからです。

男性の場合

養命酒製造株式会社』が実施したアンケートによれば、自分の体に何らかの不調を感じる男性は1200人中1175人にものぼり、具体的な症状としては、疲れやすい、体力が落ちた、疲れがとれないなど、疲れに関する項目が上位に挙げられています。

30~50代の男性のうち、「全く健康で体調の悪さを感じたことがない」「健康」な男性は2割弱(17.8%)に過ぎませんでした。8割以上のビジネスマンが多かれ少なかれ、何らかの体調不良を抱えており、健康でない人から病気の人を除いたいわゆる「未病」状態にある人は78.3%と女性とほぼ同程度の割合(2008年度調査)。性別に関係なく未病状態の人が多いという実態がわかりました。

女性の場合

こちらも『養命酒製造株式会社』が実施したアンケートです。女性は30代を境目に、変化を感じる人が多く、8割以上の女性が、何らかの不調を感じている、つまり、「未病」の状態にあることがわかりました。

最近の体調を聞いてみたところ、全く健康で体調の悪さを感じたことのない人は、わずかに11.3%。病気であると自覚している人を除いた、84.8%が、何らかの不調を感じていることがわかりました。

 

今日からできる未病対策は?健康でいる為に活用できる3つの方法

病気にならずに生活する方法は多くあります。

厚生労働省のHPでも、生活習慣病や健康を守る要素は『食事』『運動』『睡眠(休養)』だと断言しており、この『健康3原則』に気をつけて暮らす事が、健康を維持する事に繋がるのは間違いありません。

では、未病対策をするには、具体的にどのようなことをすれば良いのか?

医学的な知見は医師に直接聞いて頂くのが間違い無いと思いますので、ここでは主な手段と考え方についてご紹介します。

生活習慣病の予防対策を徹底する

日本の死因で最も多いのは生活習慣病による死亡です。

生活習慣病による死亡
参考:生活習慣病対策に関する最新の動向|国立保険医療科学院

まずはガンや心疾患、糖尿病を含む生活習慣病を予防する取り組みを始めるのが良いものと思います。

生活習慣病とは
食 習 慣: インスリン非依存糖尿病、肥満、高脂血症(家族性のものを除く)、高尿酸血症、循環器病(先天性のものを除く)、大腸がん(家族性のものを除く)、歯周病等
運動習慣: インスリン非依存糖尿病、肥満、高脂血症(家族性のものを除く)、高血圧症等
喫  煙: 肺扁平上皮がん、循環器病(先天性のものを除く)、慢性気管支炎、肺気腫、歯周病等
飲  酒: アルコール性肝疾患等

参考:生活習慣病を知ろう! – スマート・ライフ・プロジェクト

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定期的な健康診断・人間ドックに行く

これは個人的な意見ではありますが、健康を測る機会が少なすぎると思っています。企業勤めの社会人でさえ、1年に1回の健康診断しか行なっていません。仮に『要指導』『要医療』と診断された場合でも、『来年に再検査を受ければ良いや』と、深刻に受け止めていない方も非常に多くいます。

いまこの記事を読んでいるあなたはそんなことは無いと思いますが・・・

未病対策で一番大事なポイントは『何かおかしいと思ったらすぐに病院などへいくことこと』と、『普段から健康に気を使って生活する癖をつける』ことと言えます。

健康診断系サービス・遺伝子検査も利用できる

また、最近では健康診断データを元に改善提案をしてくれたり、企業の福利構成として取り入れ、会社単位で未病対策ができるサービスもありますので、いくつかご紹介します。

HQCチェック®

HQCチェック

「健康課題や改善指標」を、数値やグラフでわかりやすく知ることができます。チェック分析結果を集積したデータから見えてくるさまざまな因子を分析・分類・解析することで、コミュニティーベースの健康促進や、企業・団体の従業員健康管理を行うことができ、 的確な未然予防アドバイスが可能になります。

公式サイト:https://www.hqc-tokyo.com/

おうちでドック

おうちでドック公式サイト:https://dock.ouchide.biz/

おうちでドックは、健康診断やがん検診を受診する機会の無い方でも、病気の早期発見・重症化予防が実現できる仕組みを構築しております。病院と同等精度の郵送検査、専門家への医療相談、自分に合った病院探しまで、全てを自宅で実施できるシームレスなサポート体制をご提供することにより、全ての人が健康になれる社会づくりに貢献して参ります。
引用元:PRTIMES

遺伝子検査キット『ジーンライフ』

ジーンライフ公式サイト:https://genelife.jp/

ヒト遺伝子の全ての配列のうち、個人差があるのは0.1%といわれ、この0.1%の違いでお酒に強い・弱い、糖尿病や骨粗しょう症などの病気にかかりやすい・かかりにくいといった体質が左右されているのです。遺伝子は一生涯変わることがないため、検査をするのは一度のみです。遺伝的リスクを知り、生活習慣を見直すことで早い段階から的確な予防を行うことができるのです。

また、この自分の体質や特徴を調べる事で同じ変異を持つグループを見つけ、その歴史を調べる事で祖先を知ることが出来るのです。

引用元:ジーンライフ

 

未病改善・予防の取り組み事例

ここでは、『未病』にいち早く取り組んでいる企業や自治体の事例をご紹介します。

地方自治体

神奈川県|かながわ未病改善宣言

神奈川県では平成29年3月29日に「かながわ未病改善宣言」を発表し、健康寿命を延ばすため「未病を改善する」取組みを進めています。この宣言では、2つの理念と重要な3つの取組みを掲げ、全ての世代が未病を自分のこととして考え、行動していくよう、ライフステージに応じた未病対策を進めています。

引用元:神奈川県

愛川町

養命酒製造株式会社|未病サラリーマン診断

養命酒製造株式会社は、「サラリーマンの未病実態」というテーマで、インターネット調査を 2017 年 6 月 8 日~6 月 9 日の 2 日間で行い、30 歳以上のサラリーマン(会社員、公務員・団体職員の男性)1,000 名の有効回答を回収しました。(調査協力会 社:ネットエイジア株式会社)
病気とは言わないまでも、健康でもない状態(病気に向かいつつある状態)のことを“未病”といい、健康を維持するには、 いち早く未病の時期を捉え、改善していくことが大切です。なんとなく体がだるい、疲れやすいといった不調を少しでも感じ たら、それは未病の始まりかもしれません。未病には自覚症状がある場合もない場合もありますが、いずれにせよ早めにケア をすることが健康を取り戻すための重要なポイントです。

引用元:養命酒製造株式会社

厚生労働省|セルフメディケーション税制

セルフメディケーション税制
適切な健康管理の下で医療用医薬品からの代替を進める観点から、健康の維持増進及び疾病の予防への取組として一定の取組を行う個人が、平成29(2017)年1月1日から令和3(2021)年12月31日までの間に、自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族に係る一定のスイッチOTC医薬品の購入の対価を支払った場合において、その年中に支払ったその対価の額の合計額が1万2千円を超えるときは、その超える部分の金額(その金額が8万8千円を超える場合には、8万8千円)について、その年分の総所得金額等から控除する。

引用元:厚生労働省

 

まとめ

未病に関する基本的な知識をご紹介してきましたが、健康な生活を送ることは、実は意外と難しいことなのかもしれません。今こうしている瞬間にも、何かしらの病気が進行している可能性もありますし、全く無いのかもしれません。

未病の状態とはまさにこの状態で、『自分はもしかしたら病気かも』なんて、普段は誰も思わないものです。そこが未病対策の難しい部分ではありますが、今回の内容をきっかけに、少しでも『未病』に対する理解が深まれば幸いです。

 

ABOUT ME
宮下
健康診断ドットコム編集部。主に『未病』、医療×ITの『ヘルステック』系に関わる。