訪問リハビリテーションとは、その人が自分らしく生活をおくれるように、それぞれの地域に出向いてリハビリテーションの立場から行われる支援のことをいいます。
病院や診療所、介護老人保健施設の理学療法士、作業療法士、言語療法士が利用者の自宅を訪問し、心身の機能の維持・回復、日常生活の自立を支援するために、理学療法、作業療法などのリハビリテーションを行うサービスです。
訪問リハビリテーションの概要|通所リハビリテーションとの違いは?
在宅生活において日常生活の自立と社会参加を目的として提供されるサービスが訪問リハビリステーションです。
疾病や加齢等により健康状態を害した人だけでなく、健康状態を損なう恐れのある者及びその家族や生活を共に地域住民の全てを対象と捉え、その対象者が生活を営む地域に、リハビリテーションの立場から行われる支援の総称のことを指します。
自分らしく暮らすとは、本人が納得した生活であり、その人の主観だけではなく、利用者とともに暮らす人達との関係性から生まれる「役割」や「存在価値」などを見出した生活のことを言います。
利用者やその周りの人たちが「その人らしく」生活出来るように、訪問リハビリテーションでは、リハビリテーションを主業とする理学療法士、作業療法士、言語聴覚士等が「その人らしく」生活する上での工夫や手段に対する助言等の支援を行うことです。
通所リハビリテーションと違う点は、実際の生活環境に添った訓練ができること、利用者本人がリラックスして行えることです。
訪問リハビリテーションの主なサービス内容5つ
病状の観察
訪問リハビリテーションを行う際には、利用者の健康状態が大切になります。多くの場合疾患を患いリハビリテーションが必要になっている方がほとんどのため、現疾患の状態を見つつ、リハビリテーションを進めていく必要があります。
リハビリテーションを始める前には、病状の観察が重要です。
病状の観察がとしては、バイタルサインのチェック(体温、脈拍、呼吸、血圧等)、病状の観察や助言、精神面の健康状態の確認と助言、再発予防と予後予測などを行います。
バイタルサインに異常が見られた場合には、リハビリテーションを中止しなくてはいけないため、日々変化がないかを確認しなければいけません。また、いつもと様子が違うなと感じたり、身体的な不調を訴えている場合にもリハビリテーションを中止するかの判断が大切になってきます。
精神的や身体的に不調が見られた場合、無理にリハビリテーションを行ってしまうとさらなる不調に繋がりかねないため、利用者の変化や訴えには十分に耳を傾け、普段との変化に注意しながら行っていきましょう。
身体機能の改善
訪問リハビリテーションの目的として、現状の機能の維持や向上が上げられます。今以上に身体機能が低下しないためにも、その利用者に合ったリハビリテーションが必要なのです。
現状の機能の向上や維持を行うのに必要なことは、まず身体機能(筋力、柔軟性、バランス等)の維持や改善、痛みの評価と物理療法などの疼痛緩和、摂食・嚥下機能やコミュニケーション機能の改善などがあります。
原疾患で身体機能が低下した場合や動けない場合など、その身体機能の維持や向上のためにもリハビリテーションは必要になります。人は寝たきりになると1日に2~3%の筋力が低下していき、1週間では約10~15%の筋力が衰えると言われています。
風邪などをひいて数日寝込んでいて、治って動き始める時に身体が重だるいと感じるのはこの為です。疾患で調子が悪いと臥床状態が続くため、廃用性症候群にもなりやすくなります。
寝たきりにより併発するリスクを減らす為にも、リハビリテーションは重要になります。
日常生活の指導·助言
訪問リハビリテーションでは、その人らしく日常生活を送ることが出来るように手助けを行います。病院から退院後、自宅で生活をするとしても入院前とは身体的な状態が変化していたりする場合があります。
例えば、転倒し大腿骨頸部骨折で手術を行い退院した場合、骨頭の脱臼予防のために外転位に注意しなくてはいけません。しかし、高齢者がほとんどのため入浴時や排泄時に誤っまって外転してしまい、脱臼するといったことも多いのです。このような場合、外転せずに排泄を行う方法や外転してしまいそうな状況の場合の対策などを訪問リハビリテーションでは、家族や本人に指導や助言を行います。
訪問リハビリテーションの役割として、ADL(日常生活動作)の指導、福祉用具または補装具、住宅改修の評価と相談なども行います。利用者やその家族が自宅でその人らしく生活出来るように、不自由になってしまったものを補っていく支援を行っているのです。
介護相談・家族支援
在宅療養において、大切なのは利用者や家族の身体的·精神的負担を軽減することがです。いくら自分の自宅で過ごしやすいといっても、疾患を患う前とは大きく変わってきます。
今まで出来ていたことが出来ないという本人の苛立ちであったり、24時間利用者の介護を行う家族の負担も大きくなってきます。
利用者と家族の理解度が相違してしまうと、お互いのストレスとなり「こんなことも出来ないの?」と感じてしまったり、「何故わかってくれないんだ」と思ってしまいます。
そうなると在宅療養が難しくなってしまう場合もでてくるため、利用者や家族のストレスを軽減できるようにすることが重要になります。
精神的な支援、家族への介護指導、療養生活上の相談、福祉制度利用の助言や相談などの支援を行います。
家族が利用者の今出来る範囲を把握し、自宅で生活する上でどのようなことが必要なのかを一緒に考えることで、より生活しやすくなります。また、お互いにとってストレス負荷が少ないように上手に社会資源を利用できるように相談にのることも大切です。
QOLの向上支援
疾患を患うと、つい疾患にばかり気がいってしまいがちになります。それは利用者本人だけでなく家族も同じです。
しかし、長期で疾患と付き合っていかないといけない場合疾患にばかり気を取られてしまうとストレス値は上がってしまいます。
事故で頚椎損傷になり、下半身が動かないという20歳の男性がいました。事故後、生活は一変してしまい寝たきり状態で、気力のない本人に対して家族はどう接していいか分からず、本人自身も家族も「病人」たいうレッテルを貼ってしまっていました。
[chat face="ER看護師.png" name="" align="left" border="gray" bg="none" style=""]訪問リハビリテーションを行うようになり、話を聞くと元々事故前はプロのゴルファーを目指していたとの事でした。ずっとスポーツをしていたこともあり、体幹がとても強かったため、早期離床を促し自己にて車椅子生活を送ることが出来るようになりました。
生活する上では何の問題もなくなりましたが、プロゴルファーという夢を半ばにして諦めなくてはいけなくなったためその思いのやり場に困っていると家族からの話でした。[/chat]
そこで、障害者スポーツの話をし1番興味をもったスキューバダイビングに挑戦してみようということになったのです。家族も協力的で、新たな目標が出来ました。
このように、利用者のQOLの向上を支援したり、趣味や社会参加促進のための助言を行うことで、利用者やその家族にとってより良い生活を送って貰えるように支援することが大切になります。
訪問リハビリテーション費用(自己負担額)は?
訪問リハビリテーションの利用料の目安は
- 1回20分
- 週に6回限度
- 1割負担の場合は292円
原則1割が事故負担額になりますが、基準以上の所得のある場合は2割〜3割負担となります。
事業所の種別 | 自己負担額 |
---|---|
病院又は診療所 | 1回につき292円 |
介護老人保健施設 | |
介護医療院 |
- 事業所と同一敷地内または隣接する建物に居住する人の場合:自己負担額×90%
- 同一敷地内または隣接する建物に居住する利用者の人数が1か月あたり50人以上の場合:自己負担額×85%
上記以外の範囲に所在する建物に居住する人で、その建物に居住する利用者の人数が一か月あたり20人以上の場合は、自己負担額×90%で利用できます。
事業所の選び方·5つの比較ポイント
訪問リハビリテーションを開始する際に知っておきたい5つの比較ポイントを紹介していきたいと思います。
専門職種が在籍しているか
訪問リハビリテーションは主にリハビリ職である理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が訪問して行うサービスです。
理学療法士や作業療法士は比較的人数がいますが、言語聴覚士の資格をもつ人は少ないため在籍の有無の確認が必要です。
例えば脳梗塞後で嚥下リハビリや失語症のリハビリを行いたい場合、言語聴覚士の有資格者が必要になります。しかし、事業所によっては言語聴覚士が在籍していなかったりする場合もあるため、自分にあった職種が在籍しているかの確認が重要になります。
認知症ケア研修を行っているか
認知症の方の場合、時にはリハビリを拒否したり、暴力的になったりする場合もあります。認知症に対する知識があるのとないのでは、認知症の方に対する接し方が異なります。認知症の方の場合、上手に対応することができればリハビリも拒否されることなく施行できます。
専門的な知識があるか、また研修を行っているかなどの確認すると対応してもらえるかが分かります。
経験値は豊かか
訪問リハビリテーションの場合、1人で訪問するため判断できる経験値は重要になります。リハビリテーションの場合間違えた施術を行うと、悪化させてしまうこともあるためです。
キャリアがあるかないかは、事業所に確認しないと分からないため、依頼する際には確認することが必要になります。
対応方法が明確か?
例えば、リハビリ施行中に体調が悪化し急変した場合など、どのような対応を行っているかが明確化され、マニュアル化されているところの方が安心出来ます。
リハビリ中に急変しているのにあたふたして慌てていたとしたら困ってしまいますよね。
また、担当のリハビリテーション職員が病気や退職などで訪問できなくなった場合、どのような対応になるのかも知っておく必要があります。
在宅における利用者やその家族は、訪問する専門職に対する信頼度は強固な場合が多いため、急に変わるとなると不安に繋がります。利用者や家族に不安を与えないためにも、引き継ぎなどはきちんと行われている事業所なのかを確認するほうが安心だきます。
ケアマネージャーや福祉用具の事業所などと連携しているか
訪問リハビリテーションでは、その人に合わせた住宅改修(手すりが必要か)や杖·歩行器などの福祉用具の選定も行ってくれます。
その際に、ケアマネージャーや福祉用具の事業所と連携をとってくれると、話がスムーズに進み、家族にとっての負担は軽減されます。
しかし、福祉用具の選定や住宅改修などは、金銭的にも生活面の変化的にも、利用者や家族にとって大きなことなので専門家同士で話をするのではなく、三者または四者間でしっかりと話し合いをし決めれるように配慮してくれるような事業所がいいです。
事業所を選ぶ際に、福祉用具の選定方法などを確認するとわかると思います。
まとめ
訪問リハビリテーションは、在宅においてその人らしく生活するために支援や助言を行います。リハビリ職が専門的に行ってくれるため、利用者の症状に合わせたリハビリをおこなってもらうことが出来ます。
訪問リハビリテーションは疾患をみるというわけではなく、いかにその人らしいQOLを保つことが出来るか、ADLをアップすることが出来るかがとても大切になります。
その人らしく生活するためにも本人や家族、リハビリ職が手を取り合って二人三脚でリハビリテーションを行っていけると、利用者にとっての最大限を引き出せると思います。
自分にあった訪問リハビリテーションに出会えるように参考にされば幸いです。