認知症と聞くと、どのようなイメージが思い浮かびますか?多くの方は、認知症と聞くと暴言・暴力・被害妄想・徘徊といったようなマイナスイメージを思い浮かべる人が多いかと思います。ですが、認知症になれば、すべてこの症状が出るわけではありませんし、治療や対応法方法でこのような症状も緩和することができます。
そのためには、まず認知症という病気を知ることが大切です。まずは、認知症についてご説明していきます。
認知症になる人の割合
自分は?もしくは家族が認知症になるのでは?と不安になる方もいらっしゃるかと思います。一体、どれくらいの割合の人が認知症になるのか?
世界保健機構であるWHOの発表によりますと、現在世界の認知症有病数は約3560万人を上回っており2030年にはこの倍である6570万人そして、2050年には3倍の1億1540万人の人が認知症になるのではないかと言われています。
参照:認知症有病率の時代的推移 ―洋の東西の比較 - J-Stage
たくさんの人がなるであろうという事はわかったけど、規模が大きすぎてあまりピンときませんよね。具体的に言うと2025年ごろ65歳以上の5人に1が認知症になるという計算になります。5人に1人と聞くと、なかなの割合で認知症になるのではないか?と不安に思うかもしれません。
認知症の4つの種類と主な症状
認知症と聞くと、一つの病気かと思う方が多いと思いますが、認知症とは病名ではなく症状になります。この認知症症状が出現する原因となる病気はいくつかあります。
その中でも、メジャーなのが、アルツハイマー型認知症・前頭側頭型認知症・レビー小体型認知症・脳血管性認知症の4大認知症です。この4大認知症も認知症と一言で言っても全く違う症状が出現します。では、具体的にどのような症状が出現するのか?そしてどのような事が原因で病気が起こるのか?
アルツハイマー型認知症
認知症と聞くと、アルツハイマー型認知症が思い浮かぶ人が多いのではないでしょうか?それだけ、アルツハイマー型認知症は、認知症の原因として最も多い病気です。
アルツハイマー型認知症の特徴としては、いつの間にか始まりそして、緩やかに進行していきます。ですので、はじめはあれ?もの忘れがあるかな?程度から始まっていきます。
アルツハイマー型の症状
アルツハイマー型認知症の症状は、中核症状とBPSDがあります。中核症状としては、記憶の障害、見当識障害、失語、失行、失認、遂行機能障害といった症状が出現します。BPSDでは、妄想・誤認・不安・意欲低下・無気力・知覚障害・睡眠障害・そして不穏・拒否・徘徊・多動・拒絶・攻撃といった症状も出現します。もちろん、このすべてが出現するわけではなく、この症状の中からいくつかの症状が出現します。
アルツハイマー型の原因
認知症を診断するにあたっては、頭のCTもしくはMRIを撮影するのですが、この画像診断で大脳の側頭葉にある海馬の萎縮もしくは、老人斑と呼ばれる変化で診断をします。
アルツハイマー型認知症の原因はまだ解明されていないのが現状です。ですが、遺伝や環境、生活習慣などの複数の因子が絡み合うことでアルツハイマー型認知症になるのでは?と言われています。
前頭側頭葉型認知症
前頭側頭型認知症とは、前頭葉と側頭葉が障害される病気です。
前頭側頭型認知症の症状
前頭側頭型認知症の症状の特徴としては、同じ行動を繰り返したり,抑制のとれた行動をしたりする反面、関心のないことに対しては全く興味を示さず無視してしまいます。
症状としては、状況に合わせた行動調整が難しくなる、無関心、人への共感や同情の欠如、病識を持てない、食嗜好の変化、意欲低下、自発性の低下、発動性の低下といった内容です。
前頭側頭葉型認知症の原因
脳にある前頭側頭葉の神経細胞が壊れていくことで、認知症症状が出現してきます。原因はまだ解明されていませんが、タウ蛋白とTDP-43というたんぱく質が原因で起こるという事が解ってきました。
レビー小体型認知症
レビー小体型認知症はパーキンソン病の症状にも似ていると言われています。
レビー小体型認知症の症状
症状としては、幻視・錯視・変形視・重複記憶・錯誤といった症状。そして、認知機能や運動機能の激しい変動があります。激しい変動とは、良いときは普通に行動・会話が出来ますが、調子が悪くなると身体の動きが悪くなったり、頭の回転が悪くなったりします。また、パーキンソン症状として、固縮・動作緩慢・前屈姿勢・小刻み歩行・起立性低血圧・便秘などの症状が出現する可能性もあります。
レビー小体型認知症の原因
レビー小体型認知症は、脳幹と大脳皮質にレビー小体という蛋白がたまることが原因で起こります。
脳血管性認知症
脳血管性認知症とは、これまでお話した認知症のとは違い治癒する可能性のある病気です。脳血管性認知症の特徴としては、急に認知症症状が出現したり急激に悪化したりします。
脳血管性認知症の症状
脳血管性認知症の症状としては、動揺性の経過・感情失禁・混乱・不安・嚥下障害・構音障害・幅広歩行・頻尿・パーキンソン症状などが出現します。
脳血管性認知症の原因
脳血管性認知症の原因は、脳梗塞や脳出血などの血管障害による認知症症状の出現する病気です。梗塞や出血する場所や大きさによって症状が異なってきます。
認知症は治るのか?治療法は?
認知症は治るのであれば早くから治療を開始したいと思う人が多いと思います。認知症には治るものと治らないものがあります。
脳血管性認知症のように、脳血管の異常による認知症症状は改善されますが、アルツハイマー型認知症や前頭側頭葉型認知症、レビー小体型認知症では認知症は現在の医療では治ることが出来ません。
治すことはできませんが、進行を遅らせることができます。進行を遅らせるために薬物療法を非薬物療法の2つの治療を行っていきます。薬物療法で、内服もしくは貼り薬を使用します。
そして、非薬物療法では、リアリティーオリエンテーション・回想療法・音楽療法などを行います。
認知症を予防する為に日常生活で改善できること5つ
できることなら、認知症になりたくないと思いますよね。では、どうすれば認知症を予防することが出来るのか?
そして日常生活ではどのようなことを改善すれば良いのか?という事を踏まえて、日常生活で改善できる5つのことをご紹介していきたいと思います。
生活習慣病を予防もしくは治療をする
認知症を引き起こす原因の中には、生活習慣病との関連が強くあります。そのため、生活習慣病にならないように予防、もしくは生活習慣病になれば改善するように生活習慣を見直すことが大切です。
生活習慣病である、高脂血症・高血圧・糖尿病にはならないように日ごろから気を付けなければいけません。
適度な運動をする
適度な運動とはどのような事をすればよいのか?と思いますよね。テレビで放送されている体操を一緒に行ったり、散歩に行ったりすることをお勧めします。
無理に筋肉トレーニングなどを行うと体に負担がかかりますので、体に負担をかけない程度に運動をしてください。また、無理にするのではなく自分の出来る範囲で行うことが大切です。まずは、自宅の近所を散歩してみることから始めてみてはいかがでしょうか。
他人と交流する
他人と交流するのではなく家族と会話していれば十分では?と思う方も多いかと思います。ですが、家族ではなく他人と交流することはとても重要なポイントになります。
家族には甘えがあるため、気を使い相手を考えて行動することがとても難しいです。ですが、他人と交流することで適度な緊張感を感じることが脳の刺激になるのです。友達、近所の人または、お店の人誰でも構いません。家族以外の人と話をすることが、適度な緊張感を持ち脳に刺激を与えることになります。
趣味に時間を使う
なんでも構いません。将棋でも読書でも、パチンコでも裁縫でもなんでも構わないので自分の好きな事に時間を使うことが気分転換にもなりますし、脳の刺激にもなります。
ただ、いくら好きな事をして良いと言っても、周りに迷惑をかけてはいけませんので、パチンコなどをするときは、お金の使い過ぎに注意してください。
最近では、趣味を持たない高齢者が増えてきています。今まで仕事人間だったり専業主婦だったりする人は、いまさら趣味なんてと思うかもしれません。ですが、これから残りの人生を楽しむためにも趣味を見つけてそれに時間をかけることは、大切な事なのです。
バランスのとれた食事をする
年齢を重ねると、好きな食べ物しか食べなくなる方が多いですが、バランスのとれた食事取ることが大切です。中には食に対して興味のない方もいらっしゃいます。そのため、最低限の栄養を摂取することで精一杯という方もいらっしゃるでしょう。
ですが、バランスの食事を摂取することは認知症の予防だけではなく健康を維持するためにとても大切な事です。
特にビタミンB1、ビタミンB12が欠乏すると認知症症状が出現する可能性もありますので、しっかりビタミン摂取しておくことをお勧めします。
まとめ
認知症といっても、1種類だけではなく実は大きく分けて4種類に分かれています。脳のどの部分にどれだけの障害が出ているかで認知症症状も異なってきます。
ですので、もの忘れや徘徊をしているからといって認知症と決めつけるのではなく、まずは認知症に詳しい医師に診断をしてもらう必要があります。画像検査と診察で確定診断をおこなってもらい、どの認知症であるか明確になる事で、これからどのように病気と付き合っていくのかを考えなければいけません。
また、認知症は生活習慣を見直すことで予防することが出来る病気でもあります。自分自身もしくは家族が認知症になりたくないと思うのであれば、日ごろの生活を見直してみてください。